合成の誤謬

合成の誤謬(ごうせいのごびゅう)という言葉をご存知だろうか。


その意味はと言えば・・・
 
ミクロの視点では正しい事でもそれが合成されたマクロの世界では、
必ずしも意図しない結果は生じる可能性がある。(ウィキペディアより)
今、これが日本経済で起きようとしているかもしれない。
政府は今、企業や企業家たちに躍起になってデフレの出口を完全に掴みとる為に躍起になって賃上げを訴え、あるいは経済団体に対し直接依頼をしている。賃上げをする事により物価の上昇に対応し末端経済の好循環をもたらし、その先にある消費税増税のショックを和らげる目的だ。
 
政府が語りかけている相手である大手企業はと言えば、保有するキャッシュは豊富だ。不況と言われる時期に貯め込んだ「内部留保」と言われる資金だ。もちろん、税法上何ら問題の無い企業資金だ。
 
2020年五輪東京開催が決まり、ビジネスチャンスは豊富にある。
 
そのビジネスチャンスを見据えて賃上げをしておけば末端経済は好循環を生み出し、更には企業収益も本来あるべき形での向上も見えてくる。というのが政府が考えている事でもあれば、経済を語る人々の大方の見方でもある。もちろん、これは正解だ。
 
政府は賃上げを実施した企業に対しての減税案も示唆しているが、反対する企業も多く示唆している減税案が陽の目を見るかも不透明な状況だ。しかし、企業は幾重にも鎧をまとった守りの姿勢を続けようとしている。
  • コスト削減
  • 人員削減
  • 生産拠点の海外移転
  • 下請けの切り捨て
そんな事を続けていれば、デフレの糸口をつかみかけたとされる日本経済はまたしても波に乗り切る事が出来ず成長へのかじ取りを失敗する事になる。そうなれば「合成の誤謬」となって企業に跳ね返ってくるのは間違いないのではないだろうか。
 
日本はこの二十数年で色々な物を失った。
中でも経済成長を失った結果、日本人の経済的な幸福は地に落ち働く人々の夢も希望も無くなった。これは当時の政府の経済政策の失敗によるところが大きいが、当時から現在までの企業家たちの失敗でもある。その企業家に従属することしかできない日本人は失望を大きくした。
 
合成の誤謬となって跳ね返ってくるのは企業としても避けたいところではあると思う。しかし、幾重にも鎧をまとった守りの姿勢を続けようとすれば間違いなくそうなるに違いない。もしそうなれば日本の経営者は無能であるとも言える。経営者は無能というレッテルを貼られない為にも、そして合成の誤謬による負の連鎖を繰り返さない為にも今一度考え直すべきではないだろうか。
 
合成の誤謬は企業がその使命を果たさない事に対する何らかの報復であるが、それが自らが養うべき人々まで巻き込む様な事になってはならないと経営者は肝に銘ずるべきだろう。
 
合成の誤謬なんてものが日本企業の多くにその影響を及ぼしてきた時の事なんかは考えたくはないし、恐ろしくてこれ以上は書きたくないのだが多くの日本企業は2度と立ち上がれない所まで行ってしまう様な気がしてならない。