どうやら生命保険代理店の在り方が変わるらしい

2013年年末からこのネタで少し右往左往していた。

ただの物書きならそこまで右往左往する事はないし少しセンセーショナルに面白おかしく書けば興味を得る事が出来る。しかし、私の場合は少し違う。私はこの業界に深く関わりがあるからこそ取材・ウラ取りで右往左往した。

 

何を隠そう、保険業真っ只中にいるからだ。

ところで、生命保険代理店を名乗る保険募集人と呼ばれるセールスパーソンの身分を皆さんはご存知だろうか。概ねがこの3種類。

1.保険会社と委託契約を結んだ個人代理店

2.保険会社と委託契約を結んだ法人代理店から再委託を受けた個人・法人

3.保険会社と委託契約を結んだ法人代理店に直接雇用された社員

 実は今、この2番目に関して問題になっている。というよりも問題にしたい保険会社があり関係当局に働きかけをして問題になってしまったという方が正確かもしれない。

 

なぜ、問題になったかと言えば表向きの理由は「責任の所在」と「再委託」

「責任の所在」保険募集人と呼ばれるセールスパーソンが契約者に対し損害を負わせた時にその責任を誰が負うか。保険会社なのか、保険代理店なのか保険募集人なのか。これがはっきりしないという事のようだ。

 

「再委託」保険業法では保険会社から委託を受けた保険募集人が委託を受けない第3者にその業務を委託する事は禁止をされるという趣旨の条文に抵触するという事。

 

法律条文的に言うと保険業法283条の部分がはっきりしないという事と保険会社から委託を受けた者が第3者に再委託してはならないとする保険業法282条に抵触するというのだ。

 

では本音の部分は何かというと、働きかけをしたとされる某生命保険会社をはじめとする大手社の契約がこうした保険代理店に食われている自らの収入保険料の減少に歯止めをかけたいという事、金融庁側は法的に問題のある部分を抱えるところがある募集人委託型保険代理店を壊滅させたい。

 

ここに至る原因は他にもあるとはいえ、雑駁に言えばこんな事だ。

保険業に携わっている身とすれば大手社の理屈は理解不能、金融庁の考えている事は一見理解できるようで全く理解に値しない。というのが私の感想。大手社の商品や営業手法がそれに値しないという事で収入保険料を落としたという事であるし、長期に渡り検討していたとはいえ、この形態の保険代理店が出てきてから直ぐにそこへ切り込まなかった金融庁の怠慢が感想の理由だ。

 

では金融庁はこの状況をどの様に解消しようかと考えているか。

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上の図のように業務委託型を完全に禁止し業務委託契約をしている募集人を社員として雇用をさせるというものだ。

 

私が取材した範囲で金融庁は2案持っているらしい。

1.経過措置なし正式に発表した後、直ちに社員化させる。

2.経過期間を設け更に募集人が100人を超える代理店のみ社員化させる。

しかし、どちらも現実味に欠ける。

前者を見ると業務委託で抱えている募集人を社員とすれば会社として大きな負担が増えることになる。財務基盤が必ずしも盤石ではない保険代理店はその負担自体が不可能である。

 

後者を考えても現状で1000人を超える業務委託者を抱える代理店が存在する今、100人という数的根拠は乏しいものであり併せて大きな不公平感が発生しこれも現実的ではない。

 

銀行窓口での保険販売が開始や郵政民営化により保険募集人と呼ばれる資格を持つものは100万人を超え、その内の10万人が委託型代理店に所属をする募集人であると言われる。上記の様な事になればある程度の数字を持った募集人しか雇用できないとなる可能性もありこれはこれで大きな問題となる。それ以外にも様々な問題が発生する。

 

私は、この問題で10万人と言われる委託型募集人の多くが自ら業界を去り、多くその意思に関わらず業界を去らなければならない状況に陥ると考えている。金融庁が業界全体の10%程度のところの整理のためにこれを目論んでいるのであれば大きな間違いであるし、もっと先に整理すべき事があると考える。

 

保険業界が整理すべきは法令違反や道義的に問題のある営業行為をする販売チャネルや多様化し過ぎた販売チャネルの整理が先でそれを行った上で適正な保険販売が出来るように整備をしていくのが先ではないだろうか。

 

まだ、正式にこの件がリリースされたわけではないが今回の件により委託型の代理店や委託型の募集人は絶滅する事は目に見えている。そうなってしまえば自由度高く様々な活動をしてきた私は保険業界に全く魅力が無くなることだけは確かだ。