優先させるべきはコストか。顧客か。 ~食材誤標記問題から考える~

よく観れば10日も書いていない。

書きたい事が無かったかと言えば嘘になるが書く気にならなかったというのが正解かもしれない。
このブログは別に時事問題に限って書いていた訳ではないのだがそんな記事が多くなっていたのも事実。そうなると書きたい時事問題を探しあさる事になり結局、途中で書く気が失せると言うのが正確なところかもしれない。

日本人というのはどうも自分や組織を優先してその周りにあるものを蔑にする傾向が強い。
特に失われた20年という期間でその傾向は強くなったように思う。その優先の仕方が悪いから問題なのだが・・・。

ここ数日、食材誤表記という事が問題になっている。
事の発端は、阪急阪神ホテルズの自主調査の結果を受けた記者会見から始まるわけだが、個人的な感覚であると前置きをして話をする事にするが、あくまでもミステイクを主張するホテル側の会見を見ていて確信犯である事を隠す為にミステイクを強く主張しそれを繰り返せば何とかなると言った意向が見え隠れする。

5年ほど前にこんな事件があった。

北海道苫小牧市の食肉加工会社が牛肉ミンチの表示偽装事件を起こした。この会社は後に数々の不正が発覚し、事業が立ち行かなくなり倒産し社長は不正競争防止法違反で刑事訴追をされ服役する事となるが、社長はマスコミの取材や裁判においてこんな話をした。

「半額セールで喜ぶ消費者にも問題がある」
「取引先が値上げ交渉に応じないので取引の継続を選んだ」

その頃、北海道の安さだけを求める流通業を相手にした営業マンをしていた私は言い得て妙でその通りの発言であるとも思ったが、他社への責任転嫁であるとして社会的に大きな反響を呼び大きな批判を受けた。

では今回の件はどうかと言うと、消費者は安いものを求めていた訳ではない。
価格に相応する価値を見出し、それを求めた消費者が誤表記という事で求めたモノとは違うものを買わされ食べさせられた事になる。それを誤表記で済まそうとする企業姿勢に大きな違和感を感じるのだ。

今回問題になったエビを買い続ければ安く仕入れ高い商品を提供する事が出来る。これは企業の論理というロジックで考えた結果だ。この結果を想像しなかった経営者はいないと思う。通常であれば、そこに良心の呵責が許さないはずなのだが、それを許してしまった以上「確信犯」であると言わざるを得ない。

現代社会は全て結果で評価される社会だ。
確かに食材ランクを落とし収益性を向上させた事で会社からは評価されるかもしれない。しかし、会社から評価されてもその結果顧客を騙してしまった事で評価・信頼を落としてしまえば何もならない。という事がコスト意識という顧客にとってはどうでも良いモノを優先したばかりに抜け落ちてしまっていた事なのだろう。

この件が明るみに出て批判にさらされる中で次から次に類似事例が出てきている。これらの施設は結果、顧客優先ではなくコスト優先・収益優先であったと言うことだ。はっきり言ってしまえば、今回の件だって隠し通そうと思えば隠し通したはずだ。

最後に・・・
あくまでも氷山の一角である様に思う。そして、この件は「食」という現代日本人が一番関心を寄せる事の一つだからこそ大きな問題になっただけの話であり、そこにカテゴライズされない事であれば大きな問題にはならない。どこにでもありふれた問題なのであるとも言えると思う。

そう考えた時、日本人の無頓着は病的とも言えるかもしれない。