JR北海道だけが悪質なのか・・・。

JR北海道が「弱り目に祟り目」という状況を過ぎ去り「惨状」という言葉が似合う状況になってきた。

2012年の特急おおぞらのトンネル内車両火災に端緒として度重なる車両からの発煙、そして車両火災、それらを原因とした減便・減速運転、土砂崩れなどの事前災害を起因とする自然災害被害による運休、そして9月19日に起きたJR貨物脱線事故で発覚した事業エリア全域に渡る保線不良。

9月24日には保線不良のインシデントに関する記者会見中に根室本線白糠駅構内での車両からの発煙事故、そのあと数時間後には網走駅構内で特急オホーツクのブレーキ部品の脱落が判明し部分運休と「枚挙に遑が無い」とはこの事だろうかという感じすらする。

報道を見ればJR北海道へ対する責任追及と企業体質究明みたいな報道ばかりだ。
たしかに、民間企業であるJR北海道の企業責任を誰も否定する事は出来ない。もちろん企業に課せられた責務を果たしていない事は確かであるし短期間で急速にその信頼を失った事には間違いない。しかし、そこへ対する追及だけで良いのだろうか。

9月24日の官房長官定例会見で菅官房長官が次のように述べた。

これらの事態が発生した事は誠に遺憾であり、実施中の特別保安監査を通じて徹底的に対策が講じられるように対処をしている。今回のトラブルは公共交通、お客様を輸送する事は最大の使命だが、それを果たしていない。事故が頻繁である、分かっていて対処しないそれは極めて悪質である。組織的体質的な問題があるのではないかと思っている。その辺も解明する為に国土交通省には指示をしている。(要約)                                                         

言葉尻をつかまえるみたいで嫌なのだが「極めて悪質」という言葉がとてつもなく鼻についた。

JRグループ6社と貨物1社という枠組みで分割民営化された。
しかし、その分割化案には少なからず危惧する声があったと聞いている。それは旅客や新幹線という経営資源にあふれた本州3社とそれ以外の旅客3社の格差だ。実際には分割民営化時に本州3社以外は債務を免除された中でのスタートだった。その結果がどうなったかと言えば

JR本州3社・・・それぞれ2002年~2006年に株式上場で完全民営化

JR北海道
JR四国  ・・・未だ株式国有化で完全民営化果たせず
JR九州

結局は勝ち組負け組という枠づけが出来るほどにその差は大きくなった。当然、国が株を持っている3社は株式を使った増資や資金調達などを簡単に出来るわけがなく資金力に関しても本州3社と大きな差が出来てしまったというわけだ。

本業である鉄道事業だけ抜き取ると(25年3月期決算)

JR北海道・・・約336億円の赤字   JR西日本・・・約892億円の黒字
JR東日本・・・約2856億円の黒字   JR四国  ・・・約98億円の赤字
JR東海  ・・・約3958億円の黒字     JR九州  ・・・約13億円の赤字

 

鉄道事業だけを見てもこのありさまだ。JR北海道の鉄道事業の赤字は突出して多い。
JR北海道は本業の赤字をどうやって埋めているかと言えば副業で何とか埋めているのが現状。それでも累積の赤字を埋めるだけの最終黒字になっているかと言えば、当然そこまで行かないわけだ。本業の赤字を副業で埋めて何とか最終赤字を出さない構造っていうのは企業としてそれは健全ではない。
ましてや、最終的に黒字になるのは分割民営化時に創設された経営安定化基金の運用益などの政策的補填があってこそだったりもする。

結局はそういった政策的補填が無いと生き残れないJR北海道というわけだ。
そうしたところを見ずして「悪質だ」と発言した官房長官の発言もどうかと思う。そもそも論でいけば分割民営化時の政策的なミスもあれば、その後長期に渡りそれを放置しておいた交通行政そのものの責任は大きいのではないだろうか。一応、民間企業であるので指摘は仕方ないところがあるものの株式の国有化になっている現状や地域特性などの特殊事情を多く抱え、それが故に企業体質を硬直化させ今回の事態を招いた責任の一端は株主である国にもあり、そうした現状を放置してきた国の悪質度はJR北海道以上のものがある様にも思う。

JR九州九州新幹線の開業があった2004年の黒字転換以降、黒字体質となり2012年からの5カ年計画で株式上場を目指していると言う。その上場が現実のものとなれば格差はなお一層広がる事になる。その前に国が株主としてまたは行政として打つべき対策がある様に思う。


JR北海道JR四国JR九州の実際の株主は
独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構」という国土交通省管轄の独立行政法人